もくじ
温泉の定義
「温泉」は1948年(昭和23年)7月10日に定められた日本の法律125号、温泉法で定められています。
よって「温泉」と名乗るには、国が「温泉法」で定めた定義に当てはまる必用があるのです。
温泉法 第二条による定義
第二条
この法律で「温泉」とは、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他ガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいう。
2 この法律で「温泉源」とは、未だ採取されていない温泉をいう。
温泉定義の条件
温泉法による別表に掲げる温泉の条件とは下記の通りです。
温泉と呼ぶためには次の二つの条件のいずれかの条件を満たす必用があります。
- 泉源における水温が摂氏25度以上(摂氏25度未満のものは、冷泉または鉱泉と呼ぶ事がある)。
もしくは - 以下の成分のうち、いずれか1つ以上のものを含む。(含有量は1kg中)
- 溶存物質(ガス性のものを除く。) 総量1000mg以上
- 遊離炭酸(CO2) 250mg以上
- リチウムイオン(Li+) 1mg以上
- ストロンチウムイオン(Sr++) 10mg以上
- バリウムイオン(Ba++) 5mg以上
- フェロ又はフェリイオン(Fe++,Fe+++) 10mg以上
- 第一マンガンイオン(Mn++) 10mg以上
- 水素イオン(H+) 1mg以上
- 臭素イオン(Br-) 5mg以上
- 沃素イオン(I-) 1mg以上
- フッ素イオン(F-) 2mg以上
- ヒ酸水素イオン(HAsO4–) 1.3mg以上
- メタ亜ひ酸(HAsO2) 1mg以上
- 総硫黄(S)[HS-,S2O3–,H2Sに対応するもの] 1mg以上
- メタホウ酸(HBO2) 5mg以上
- メタけい酸(H2SiO3) 50mg以上
- 重炭酸ソーダ(NaHCO3) 340mg以上
- ラドン(Rn) 20×10-10Ci以上
- ラジウム塩(Raとして) 1億分の1mg以上
上記のいずれかの条件、つまり「温度25°以上」か「19成分のいずれか1つ以上を含む」のいづれかを満たせば温泉と呼べます。
25℃以上のお湯が沸き出していれば何の成分も入って無くても温泉だというのには少しびっくりされる方もいらっしゃると思いますが、お湯に浸かるというだけで体に良いということなのでしょうね。
温泉の温度条件は、国により定めが違い異なりますが、日本では25℃以上です。
25℃以上と定められている理由は、温泉が地熱の影響を受け、全国どの地域の平均温度よりも高い温度をもつものである、という原則にもとづいています。
地表に湧き出し、平均気温の最高値より常に高い温度をもつ地下水は明らかに地熱の影響を受けているということです。
日本の温度基準の25℃は戦前の台湾や南西諸島の地域別平均気温の最高値24.9℃を基準に決められたといわれていますが、近年の温暖化の影響で、そう遠くない未来に25℃の基準が上げられるかも知れませんね。
温泉は何処でも可能
地温勾配は地球内部において深さが増すに従って温度が増加する割合を示します。現在の掘削技術で掘り進むことのできる深さ,すなわち,およそ10,000mを超える深さまでの平均地温勾配は約2.5−3℃/100mです。従って,たとえば,地下2,3m以浅の温度 (そしてそれはほぼ大気の年平均気温に等しいのですが) が15℃とすれば,2,000mの深さでは65-75℃,3,000m深では95-105℃,そしてさらに2000-3000m深くまでは同程度に温度が増加します。
25°以上の地中からゆう出する温泉という条件をもとに考えると温泉が例えば日本であればほとんどの場所で掘ることが可能です。地球の内部にはマグマがあるため、地下深くなるほど温度が上がります。
一般的には地中を100m掘る毎に約2.5-3°温度が上昇します。
よって1000mで約25-30°温度が上昇しますので1000mほど掘れば何処でも25°以上にはなると言う事になります。
ただし、岩盤が固くて掘りにくい、水脈が殆ど無く掘っても湯量が少ないなど、場所によって様々な条件がありますので実際に温泉を掘り当てたいと考えられるときはプロに相談して下さい。
鉱泉
鉱泉(こうせん)とは地中からゆう出する湧き水で、医学的見地から治癒成分を含んだ水のことをいいます。
温泉はこの鉱泉の中で温泉の条件を満たしたものが温泉。
またその温泉の中で療養泉の条件を満たしたものが療養泉です。
鉱泉>温泉>療養泉
鉱泉の種類
泉温度による分類
冷鉱泉 | 低温泉 | 温泉 | 高温泉 |
---|---|---|---|
25℃未満 | 25℃以上34℃未満 | 34℃以上42℃未満 | 42℃以上 |
液性による分類
鉱泉の液性を沸出時のpH値により次のとおり分類する。
強酸性 | 酸性 | 弱酸性 | 中性 | 弱アルカリ性 | アルカリ性 |
---|---|---|---|---|---|
pH2未満 | pH2以上3未満 | pH3以上6未満 | pH6以上7.5未満 | pH7.5以上8.5未満 | pH8.5以上 |
浸透圧による分類
低張泉 | 等張泉 | 高張泉 |
---|---|---|
等張液より浸透圧の低いもの(8g/kg未満) | 等張液と同じ浸透圧を持つもの(8~10g/kg未満) | 等張液より高い浸透圧を持つもの(10g/kg以上) |
療養泉
療養泉とは、温泉の中でも特にその成分や効能が身体に良い影響を与えるとされるもので、健康や美容、リラクゼーションに効果的な温泉です。療養泉には泉質名がつき、適応症が認められるのは温泉ではなく、療養泉になります。
療養泉として認められる条件は
- 泉源における水温が摂氏25度以上。
もしくは - 以下の成分のうち、いずれか1つ以上のものを含む。(含有量は1kg中)
- 溶存物質(ガス性のものを除く。) 総量1000mg以上
- 遊離炭酸(CO2) 1000mg以上
- 総鉄イオン()20mg以上
- 水素イオン(H+) 1mg以上
- よう化物イオン(I-) 10mg以上
- 総硫黄(S)[HS-,S2O3–,H2Sに対応するもの] 2mg以上
- ラドン(Rn) 20×10-10Ci以上
物質名 | 温泉 含有量(1kg中) | 療養泉 含有量(1kg中) |
---|---|---|
溶存物質(ガス性のものを除く。) | 総量1,000mg以上 | 総量1,000mg以上 |
遊離炭酸(CO2)(遊離二酸化炭素) | 250mg以上 | 1,000mg以上 |
リチウムイオン(Li+) | 1mg以上 | |
ストロンチウムイオン(Sr2+) | 10mg以上 | |
バリウムイオン(Ba2+) | 5mg以上 | |
フェロ又はフェリイオン(Fe2+,Fe3+)(総鉄イオン) | 10mg以上 | 20mg以上 |
第一マンガンイオン(Mn2+)(マンガン(Ⅱ)イオン) | 10mg以上 | |
水素イオン(H+) | 1mg以上 | 1mg以上 |
臭素イオン(Br–)(臭化物イオン) | 5mg以上 | |
沃素イオン(I–)(ヨウ化物イオン) | 1mg以上 | 10mg以上 |
ふっ素イオン(F–)(フッ化物イオン) | 2mg以上 | |
ヒドロひ酸イオン(HASO42-)(ヒ酸水素イオン) | 1.3mg以上 | |
メタ亜ひ酸(HASO2) | 1mg以上 | |
総硫黄(S) [HS–+S2O32-+H2Sに対応するもの] | 1mg以上 | 2mg以上 |
メタほう酸(HBO2) | 5mg以上 | |
メタけい酸(H2SiO3) | 50mg以上 | |
重炭酸そうだ(NaHCO3)(炭酸水素ナトリウム) | 340mg以上 | |
ラドン(Rn) | 20(百億分の1キュリー単位)以上 | 30(百億分の1キュリー単位)= 111Bq以上(8.25マッヘ単位以上) |
ラジウム塩(Raとして) | 1億分の1mg以上 |
天然温泉と人工温泉
地中からゆう出する温水の温度や成分濃度が温泉基準を満たすものが温泉であり、このような温泉を天然温泉と呼びます。
天然温泉に対する言葉が人工温泉ですが、こちらは人によって人工的に加工して作られた温泉という事ですが、人工的に掘削してポンプで汲み上げたものや、水蒸気やガスに水を加えて作られたものの人工温泉かといえば、そうではありません。
掘削したものは自噴でなくても湧出には違いありませんので源泉が温泉基準を満たしていれば天然温泉であり、水蒸気やガスに水を加えて作られたものも温泉基準を満たしていれば天然温泉なのです。
その他にも湧出時に温度基準に達している温泉でも、人が入浴しやすいように温度の低いものを加温したり、逆に温度が高すぎるものを冷却したりしますがこれも立派な天然温泉です。
天然温泉という言葉のイメージからゆう出したものに一切手を加えていないものをイメージしがちですが天然温泉とはこういったものを含めて天然温泉と呼びます。
これに対して、湧出時は基準の25℃に達していないものに加温したもの(一般的なお風呂のお湯もこれにあたりますね)や、温泉基準に達する成分が含まれてないものに人工的に成分を加え(入浴剤もこれにあたります)たものは人工温泉という事になります。
一般的な家庭のお風呂や一般的な銭湯のお湯は人工温泉ということです。
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